下絵写し

図案が描けたら 次は生地に写す工程

でも、その前に 裁寸・裁断  (生地に模様を入れる場所の印をつけたり、仕事しやすいように切ったり・・・)



“誂え” の場合は、その着物を着る人の寸法
“仕入れ” の場合は、着る人が まだわからないので やや大きめの寸法
(今の人は体格が良くなってるので、オレが修行に入った頃より その寸法は大きくなってるんだ)
一応、オレのやってる寸法 (鯨尺) を記しておくネ。  (変わってたら またその都度アップしてきます)

着物   身丈;4尺6寸   袖丈:1尺7寸   おくみ丈:4尺4寸   本襟:2尺8寸
       前身ごろ:6寸5分   後身ごろ:8寸   おくみ:4寸5分

 (名古屋)    全長1丈3尺以上   たれの返りまで:3尺1寸
        たれ~たいこ中心:1尺8寸   たいこ中心~おなか中心:2尺6寸   たれ~手先:1丈


下絵写し   オレの師匠の系列では↓こんな感じで 机をカットして 
           そこにガラスを置いたり、取ったりして仕事をしてるんだ。  (友禅机っていってたかなぁ?)

 

下絵写し をする時は、ガラスを入れて その下からライトであおってやって
図案の上の生地に、↓こんな感じで アイ花でトレースしてくんだ。
(アイ花 : 昔は露草の汁で、水で消えたんだけど、今は化学アイ花で蒸しで消える)



この、“設計図”を写す段階で写し間違えたら、後で収集がつかなくなるから何度でも気が済むまで確認してネ。
着物だったら “おくみから前身ごろ” といったように縫い目になるところでそれぞれ合わせて
縫い目で柄が重なるとこ全部で確認した方がいいヨ!

  (それから、アイ花は一応 消える ということになってるけど絶対じゃないから
  なるべく薄めて、最小限 アタリの必要なとこのみで使用した方がいいヨ)

 ’10.9.23  アイ花が残りそうな時に効果のある方法を教えて頂きました。  こちらから



          みんなの 健闘を祈る!                        じゃ!


・・・もし、時間があるなら “下絵の練習” を日頃からやっておくと “いざ本番” って時に役に立つと思うヨ!
   (関連記事 



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2007年10月08日 Posted by 染師 麗 at 00:00下絵写し

ローケツ 準備

ローケツ って蝋を溶かして 生地の上で固めて その蝋が水分をはじく事で
染まらない部分を作ってく技術だって もうわかってるよねぇ・・・
だから 蝋の種類 でそれぞれの “効果” の違いができてくるんだ。

 

  ↑左から マイクロワックス・パラフィン・白蝋   
   (オレが常時使ってるのは殆どこの3種類で、イロイロ細工する時に少し変えたやつを使うんだ)

マイクロワックス : 防染力が強く、粘りがあるので割れにくい。 融点が高いので固まるのが早い。
             主に 白付け と言われるバッチリ染まらない部分を作るときに使う。
パラフィン     : 現在良く使われる蝋燭の蝋。 防染力はあるが脆いので セキだし に使う。
             脆くヒビも入りやすいので、ヒビの入りやすい蝋と混ぜてヒビの加工にも使う。
白蝋        : 防染力はそれ程強くないので、イロイロな加工をする時に使う。
             木蝋を精製した蝋。
      その他 : 木蝋・蜜蝋・ステアリン・いぼた蝋・カルナバワックス・・・
(興味のある人は、わりといろんな染色の本に出てるので調べてみて。でも大体 上の3種 で間に合うと思う)

さて、蝋を溶かす時なんだけど 染色材料店とかで メルポット というサーモスタットで温度を保てるやつが
あるんだけど、板で枠を作ってやってヒーターの位置を変えてやれば、充分いけるよ。
結局は、仕事をする時のロー筆の温度が大事なので、いくら蝋鍋の温度が最適でも
筆に蝋を浸けてから モタモタしてたら何にもなんないしで・・・

 

蝋の温度の目安なんだけど、それぞれの蝋によって最適な温度は勿論違うので

蝋を生地に付けたときの生地に染みてくスピードとか
蝋鍋を筆でかき混ぜてる時の蝋の粘り具合とか
蝋鍋から上る煙?(勿論僅かといった程度・ガンガン上がってたら温度高すぎ)  

とかで ヒーターのどこら辺に置いたら (中心部なのか端っこなのか) 自分には使い易いかを判断してね。
勿論、夏場・冬場では 蝋の固まるまでの時間も変わってくるしで、これはもう人それぞれ。
オレは、生地の端 (仕立て上がったら隠れてしまうようなとこ) で試してみるのが一番わかりやすいと思う。


蝋筆なんだけど、普通の筆と違って温度の高い蝋に浸けての仕事になるので、痛みが激しいんだ。

 

左写真の下から、未使用・下ろしたて・相当使い込んだ筆 (全部同じ筆だけど筆先が全然違うでしょ)
温度の高い蝋で使うほど痛みが激しいので、温度の低い蝋から使って高い蝋にまわしてくといいよ。
それと筆下ろしをする時は勿論、蝋仕事をする時は毎回 蝋鍋の蝋が解けたくらいの低い温度の時に
右写真のように、くたびれた筆で 使う筆にゆっくり蝋を 馴染ませてやると筆の持ちが良くなるよ。
蝋の温度が高いところへ いきなり筆を突っ込むと 天ぷらみたいにチリチリになってしまうから気をつけて!



それと、ローケツの場合は ほとんどなんだけど 生地が乾いてる間に 
“蝋で柄の部分を固める” という感じだよね。  それから染めると 生地が水分を吸って伸びて
蝋の置いてある部分と、無い部分で伸縮率が違って弛みが出てしまうんだ。
 → 
↑こうなってしまうので、両側からゆっくり引っ張ってやって小張りを打ってやるんだ。
じゃないと この歪みが乾いた後に模様?になって残ってしまうよ。



ローケツの準備はこんな感じかな・・・                   じゃ!



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2007年09月09日 Posted by 染師 麗 at 00:00ローケツ

白付け

先ず、ローケツの一番最初に・・・

オレの系列の ローケツ では、基本中の基本 の技術
白付け から説明していこうと思う。

これは、防染力の強い マイクロワックス という 蝋 でバッチリと 地色 を抜く技術。
この マイクロワックス っていう蝋は、粘りがあり ヒビが入りにくいのでキッチリ防染するには とてもいいんだ。
ただ、融点が高いので (溶ける温度) それだけ他の蝋よりも 早く固まってしまう という難点?があるんだ。

 

上の2枚の写真は、生地の表・裏から見た様子なんだけど
左から 蝋鍋からすぐ・チョット後・少々時間が経って の生地に置いた状態なんだけど
左のヤツは完全に蝋が 裏まで抜けてる よね。 それに対して右のヤツは 殆ど抜けず上っ面だけ だよね。

裏まで キッチリ 蝋が抜けなければ、染めた時に 生地の裏側から 染料が回り込んで
その部分の地色を バッチリ 抜けないんだ。


他の 細工仕事 だったら、それはそれで味にもなるんだけど
白付け の場合は “バッチリと抜く” 事が目的なのでから、それでは お話にならない!


マイクロワックスを置いていく時は、端から順繰りに置いていった方がいいよ。 (↓写真左)
前に置いた 蝋の温度が下がってしまうと 次に続けて置こうとする時、前の蝋を溶かさなければならず
線がデコボコしてしまうから、蝋を継ぐときは なるべく同じ線上ではなく、線が交差する所のほうがいいよ。

 

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蝋を重ねる時は、すぐだと まだ前の蝋が熱くて なかなか蝋に厚みを付けらんないけど
一度目の蝋を置いてから あまり時間が経ってしまって 前の蝋が冷めてしまうと
先・後の蝋の温度差で 二度目の蝋が後から剥がれてしまう事があるんだ。 (特に冬場) 
だから先に置いた蝋がまだいくらか暖かい位の時に重ねた方がいいよ。 (写真右)


そして防染力の強い マイクロワックスといえど 一度置きでは蝋の薄い部分に染料が染みるので
重ね置きをしないと バッチリ とは行かないよ。

一度目は裏まで抜けるように ジワ~ッ と置いて、二度目は上に乗せていくような感じで。



この二度目に重ねて置く時なんだけど、↑の上のように表面が出来るだけ ツルッ っとした感じにするんだ。
下のように筆の跡が付いて表面が ガサガサ してると、その間に入って乾いた染料が 蝋取りをする時に
蝋が溶け 地色に付いてしまう可能性があるんだ。


・・・って事で、蝋取り の時の注意。
蝋を置いて、地色を染めて、乾いたら 染料が乾いて蝋の上に プチプチ 跡が残るよね。 (↓写真左)
場面が少なければ、渇き際に雑巾とかで拭いてやればいいんだけど
細かく たくさんの 蝋置きがある様な場合、全部は拭き切れなかったりするよね。  そんな時は

 

↑写真右のように 蝋取り をする時、アイロンを軽く当て 蝋が少し溶けたときにワラ半紙を取って
表面の蝋に付いた染料を ワラ半紙に吸い取らすんだ。 
これを何回か繰り返して、表面の染料が取れたら 本番 の蝋取りに入るんだ。


最後に 蝋筆について少し・・・



準備 の項でも 少し触れたんだけど、マイクロワックスは温度が高いので筆がとても傷むんだ。
だから、白蝋で筆を下ろして しばらく使ってから マイクロワックス用にしたらいいと思うよ。
↑写真の二本の蝋筆は同じヤツなんだけど、上のマイクロワックスで使ってる筆は
筆先が2/3くらいになってしまってるでしょ。 (それにかなり焦げてるし・・・)
それに筆先があまり細くて長いと 蝋がすぐに冷えてしまい 特にマイクロワックスでは仕事がやりづらいんだ。

大体こんな感じで 白付け は終わり。       関連記事 もどうぞ。

白付け は ホント難しい ので、みんなガンバってね!        じゃ!


 
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2007年09月01日 Posted by 染師 麗 at 01:09白付け