撒き蝋 1

今回は 蝋吹雪 とか 蝋しぶき とかも呼ばれる 撒き蝋 (まきロー) について

要は、筆に含ませた蝋を “パッ” と飛ばして、水しぶきが飛んだ様にしてやる技術。

今回は 地色としての加工 (バック処理) からみた 撒き蝋 について

  ←仕事をやってるのは こんな感じ
  
  かなり、思いもよらぬとこまで 蝋が飛ぶから
  新聞紙などで、防御してね。

  それと思ってるよりも根気の要る仕事だから
  心して 仕事に掛かってくれ!


使用する蝋は 白蝋・木蝋 あたりが いいと思う。
融点も低いので使い易いし、飛沫となって飛んだ蝋の重なりも面白い効果が出るしで・・・
蝋筆は新品ではなく、少し使って くたびれて来た やつを ↓刷毛のように つぶして使うんだ。
  
だから刷毛なんかを使っても いいかもしれない。 
(オレは 修行時代 から、これでやってるので つい筆でやってしまう・・・ もっと色んな物で試さねェとな)

  筆を叩く (叩かれる) 棒は何でもいいんだけど
  オレはチビてしまった筆を使ってるんだ。
  もっと 重い棒 を使った方が、安定した飛沫を
  飛ばせるかも知れないけど ケッコー長い時間
  やるので、オレは チビた筆が軽いので 
  なんとなく 使ってる・・・  (安易)


作業の写真で 右手に持ってるのが 上の写真の 蝋の飛沫を飛ばす筆
左手に持ってるのが 下の写真の 蝋筆に当てる棒になる?筆  (←筆でなくて全然構わない)



練習を 試し布 や 新聞紙 にしばらくして、蝋筆の温度が安定して 
飛沫の粒が一定してきたら いよいよ始めるよ。

  ←これは 5~6回 飛ばした状態

  一箇所だけやるのではなく
  全体的に まんべんなく

  (ちなみに 白い線は ゴム糊)



  先ずは、これくらい撒いてから
  一度染める
  (勿論,もっと撒きたかったら 自分のイメージで)

  もし、一度 撒いただけで終わるのだとしたら
  これでは染上がってから 蝋をとったら 
  “かなり少ない” と感じると思うよ。


  上の写真の状態を
  一度染めると こんな感じ

  蝋を撒き終わった写真に比べると
  かなり 少なくなった って感じでしょ。
  蝋が生地の裏まで抜けてなかったり
  厚みが少なかったりして
  “染料に食われちゃう” からなんだ。

  そして、一度目の染料が乾いたら
  もう一度 蝋を撒く

  写真で濃く見える粒が二回目に撒いた蝋
  幾分ベージュっぽく見えるのが一度目の蝋

  出来れば、最低二回くらいは撒きたい。
  そうしないと 奥行き感 が出てこないので

  二度目の染料が乾いて
  三度目の撒き蝋を終えたところ

  ここまで来ると 撒いた蝋に スカスカ感が無く
  上がりにも 奥行き が感じられると思うよ。

  そして最後の染に


三回くらい蝋を撒いてやると 一度目の蝋が防染した色、二度目・三度目が防染した色
蝋の上に蝋が被った部分の色、蝋が食われて薄い色・・・  そんな色々な部分があって
仕上がりに “奥行き” を感じられるんだ。

  ←三度目を染めてアップにした写真

  これは まだ濡れてる状態なので
  少しわかり辛いかも知れないね・・・
  (その上 同系色だし・・・)

  染料が乾いたら 蝋取り して出来上がり!



ちなみに “撒き蝋 1・2” で制作した作品の解説が こちら にあるので興味あったら見てね。

バリエーションは ホントいっぱいある。
例えば、黄に染めて たっぷり撒き蝋して 濃い紫を染めてやって
遠めに観ると グレー地なんだけど、近くで観たら“黄と紫のドットだった”なんて、洒落てるジャン!



最後に・・・ 
撒き蝋 をしてると たまに大きな粒↓が飛んでしまったりするんだ。

オレは 撒き蝋 は年に2~3回位しかやらないので、未だに何故大きな粒が飛ぶのかわからない。
情け無いけどそれが事実で、蝋筆の含みなのか・蝋鍋の蝋の温度なのか・蝋筆を叩く場所なのか
バックスウィングなのか・蝋筆を当てる角度なのか・・・   わからない・・・

  イロイロ研究は してるんだけど・・・  わからない・・・

  調子が良くて まるで大きな粒が飛ばない時もあるし
  途中で飛んで クサル時 もあるし・・・
   
  だから、エラソーに人に説明できる程ではないんだけどね。
  でも、やり方は こんな感じ。  


みんなイロイロ研究してみてね。  そして、なんで大きな粒が飛ぶか わかったら 教えてください。    
 
   ヨ・ロ・シ・ク!                   じゃ!

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2007年09月01日 Posted by 染師 麗 at 01:05撒き蝋

撒き蝋 2

さて、今回は 柄の一部としての 撒き蝋 について

前回は 地色・バック処理 という観点から見た 撒き蝋 だったんだけど

  ←こんな感じで柄を創っていく

  まぁ、方法 (やり方) は一緒だけどね。

  感じとしては、地色として作ってくのは
  全体を平均的に撒かなければならないのに対し
  柄としてやるのは
  創り込んで行くといった感じ

 
前回 写真を見れば、どんな風にやるか わかると思ったので説明省いたんだけど 老婆心ながら・・・

 → 
↑蝋を含ませた筆を 振り下ろして 飛沫を飛ばす方法

 → 
↑筆に蝋を含ませ パーにした手を 思い切り閉じ 飛沫を飛ばす方法

蝋の飛沫を “効果” としてチョット使うような時は 下の方法 でいいと思うけど
沢山 飛沫を撒く時は、棒に叩きつける 上のやり方 のほうが 安定すると思うよ。



さて、今回の柄は 稲妻がピカッ! といった感じを創りたかったので
稲妻の部分を “白付け”    その周りに “撒き蝋” で味付け

稲妻の部分を 白付け してから 一度地色を染める (淡金茶地)  その後、撒き蝋
  
先ず一回 蝋を撒いて、その後に 一度地色を染める

  
一度目に撒いた蝋の上を もう一度撒く 
その後、白付けした稲妻のあたり(撒き蝋されてる)を水でボカシながら濃い染料を染める。

  
この時のボカシは、撒き蝋もしてあるしで それ程気を付けなくても大丈夫。
  別にボカシをせずにやってもいいんだけど、水で稲妻の白付けした線の周りをボカシてやると
  線の周りに濃い染料が入らずに 線の周りが地色に比べ ボワ~ッ とした感じになるから
  効果的だと思ってやったんだ。   わかってもらえっかなぁ・・・



大体こんな感じかナァ・・・
この撒き蝋もそうなんだけど、工夫すればバリエーションはいくらでもあると思う。
例えば、エンブタをきって (マスキングして) 撒き蝋で柄を作ってもいいし
ボカシをした上に撒き蝋してその上をまたボカシてやればボカシに厚みが出ると思うし
他の技術と組合せれば、いろんなやり方があると思うのでイロイロ考えてね。

       健闘を祈る!                  じゃ!

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2007年09月01日 Posted by 染師 麗 at 01:05撒き蝋

撒き蝋 (大粒対策)

“撒き蝋” は、イロイロな効果を創るのに とても便利な仕事なんだけど 時によって・・・


  ← 写真中央のような 大きな蝋の粒 が飛んで
     しまう事がありますよねぇ。

  こういった 大きな蝋の粒 は染め上がった後に
  ケッコー目立ってしまいますね。


オレも師匠の下で修業をしている頃から どうしたらこの大きな粒を飛ばさない様に出来るのだろう???と
悩んでいたんだけど、とりあえず今の所 最善の策? と思われるものを記してみます。

大きな蝋の粒が飛んでしまうという事で イロイロと考えられる問題点ですが、
蝋の温度・筆に含ませる蝋の量・筆をヒットさせる時の角度・等 いろんな事が考えられますが
オレが今まで試行錯誤を重ねて来て、現在やっている方法を先ず・・・



  蝋を撒く筆 ですが、ヒットさせた時に
  筆が ぶれない様に
  ← かなり抱え込む様に持ってます





  蝋を撒く筆を ヒット する場所ですが
  ← 筆の先の方でヒットさせた方が
  大きな粒が飛ぶ確立が少ない様です

  ストロークも短く、弧を描く様ではなく
  直線的にヒットさせます
  (軽めに、デリケートに)




次に 筆をヒットさせる角度ですが・・・
×                             
  
ヒットさせた時に横から見て 写真左の様に 筆が上向きだと大きな粒が飛ぶ確立が多いようです。
写真右の様に 筆先がやや下を向いてると 筆の穂先から筆の軸に蝋が垂れて(廻って)来る事が無く
好い結果を期待できるようです。
(オレが考えるには 筆の穂先は蝋を含んで溜めておく事が出来るけど、軸の部分は蝋を含まず
溜まった蝋が思わぬ粒となって飛んでしまってるのではないかと思うんですヨ)


また、筆ですが・・・
  
筆は使って行くうちに段々とクセが付いてくるので 撒き蝋に使う筆は 撒き蝋筆と決めてしまい
平たく潰して、刷毛のようにして使います。 (刷毛や筆を何本か纏めて行ってる方も居るようです)


・・・と、まぁこんな感じで その他 蝋の温度・筆の含み等イロイロと変えてやってみたのですが
その時々に置いて 調子が好かったり・悪かったりで大きな蝋の粒が飛んでしまってました。

しかし今回 チョットした発見があったので、参考になればと・・・

蝋を筆に含ませ、撒く場所まで筆を持って行き
撒き始める前にほんの少し間を置く(0.5秒位?) という事で
かなり好い結果が得られました。

今まで筆を蝋を撒く位置まで持って行き すぐに蝋を撒き始めていましたが ほんの僅か “間” を置く事で
かなり好い結果が出たです。  オレもかなりビックリしてます。
(オレが思うには筆に蝋が均一に馴染むのではないかと思うのですが・・・)
まだ発見したばかりで 試行回数的にも少ないですので “これぞ奥義だ!” とは言い切れませんが
大きな蝋の粒に悩んでいる方が居たら 試してみる価値はあると思います。

・・・追記

  また、少々の発見?がありましたので・・・

  ← のように “筆先の蝋” を切ってやるのも
  効果があるようです。
  蝋を 撒き に行く前に もう一度 筆先の蝋だけ
  軽く切ってやるといった感じです。
  イロイロと試してみて下さい!



もし、撒き蝋を得意とされる方で “こうやった方がもっと上手く行くジェ!” という方が居らっしゃったら
是非教えて下さい。   リンクさせてもらうなり、ブログに反映させますので。

          ヨロシクお願い致します。



さて、オレの技術ブログを観てくれてる方の中には 初心者の方もいらっしゃるので老婆心ながら・・・


  ← これから撒き蝋を始める・・・








  ← 初心者の方は これ位で掛色を
  掛けてしまう事がありますが
  マダマダ・・・






  ← 大分 地の部分が潰れて来ましたが
  もう少し頑張って!







  ← 蝋を撒いても 蝋が飛んでいるのか
  良く観ないとわからない という位になったら
  やっと出来上がってから観て耐えられる位の
  仕事となります。
  これより少ないと出来上がりが なんとなく
  “ショボイなぁ・・・” と思えてしまいます。



  ← 上写真の拡大

  撒き蝋はケッコー根気の要る仕事です。
  でも やっただけの効果は期待できるので
  是非 挑戦してみて下さい!





  今回の地色部分は 渋木×クロム で
  金茶になるのですが、そこに撒き蝋して
  やや薄めの鉄で さらに媒染して
  金砂子地の様にします。

  ← 鉄で媒染した表側


  上写真の表側では
  蝋が無くて鉄で媒染されてる部分
  蝋が薄く鉄が被ってる部分
  蝋が重なって良く防染してる部分と
  奥行きがありますが、
  ← 同じ部分の裏側は
  染まってる部分・防染されてる部分だけで
  平面的ですね。


皆さんもイロイロと挑戦して 素敵な作品を創って下さい。       健闘を祈る!



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2007年09月01日 Posted by 染師 麗 at 01:05撒き蝋