引き染 (地染)

今回は、地色を染める 引き染 (地染め)  について。

“先染め” と呼ばれる 糸を染めてから反物を織っていく仕事や
“藍染” のように、生地を 染浴 の中に浸す やり方と違って
オレらのやる “文様染” は、生地を張って そこに刷毛で染料を染めていくんだ。

  ←こんな感じ
  生地を ピン と張って
  刷毛で生地に染料を染めていく
  染料は均等にムラ無く


  ←下から見るとこんな感じで
  生地を支える手で
  染料の入ったバケツを持ってる
  このバケツから染料を刷毛に浸ける



・・・先ず、地染 に入る前に
化学染料だったり、塩瀬と呼ばれる生地や薄くてムラの出やすい生地だったり
友禅仕事の前には “地入れ” と呼ばれる 前処理をするんだ。
これは、フノリ と 豆汁(ごじる) を混ぜた液を 先に生地に引いて
次に、染料を染める時に 染料が “ゆっくり” と染まるようにしてやるんだ。
  (詳しくは いろんな染関係の本に出てますので そちらを・・・)
特にムラつきやすい染料だったり、重い友禅仕事の時は 豆(ご)を枯らす と言って 何日間か放って置くんだ。

オレは 生地に余計なものを含ませたくないので
塩瀬のような生地に染める時、友禅で広い場面がある時に フノリ を 引くくらいだけどね。


・・・さて、地染に入って行くんだけど 

  染め始める前に
  刷毛に染料を良く馴染ませる
  染め始めは、染料が多めになってしまうので
  刷毛の染料を良く切ってから スタート





  刷毛の運びは、あまり大きくならないように
  特に 薄い生地 は、短いスタンスで

  出来るだけ染料が均等になるよう意識して





  刷毛の染料がなくなる頃に
  今まで染めてきた所 と それ以前 を
  軽く馴染ませてやる

  その間も まだ染まってない部分 と
  染まった部分 の境をボカス様に面倒を見る



  最後まで一通り染めたら
  最初に戻り “返し刷毛”  
  (一度染料を引いただけでは、染料の多い部分 
   少ない部分のムラがあるので 均す)

  写真でも幾分 染料の多い・少ないの
  ムラが、わかると思うけど・・・


  次に 表と裏 の差が出ない様
  “裏刷毛”  なるべく柄の側まで
  一重モノのような場合は、柄の裏もふせて
  表と同じように 染めたほうが いいね。

  これも全部終わったら、また表に返して
  もう一度 “返し刷毛”
  できる限り 均等になるように 

一応 これでオシマイ。  写真で見ると簡単そうに見えるかも知んないけど、かなり気を使うよ。
それと、写真 足元に黒いモンが見えるけど これは絞った “雑巾”
染めてる時に 何かトラブルが有った場合、雑巾があるとケッコー対処できるんで便利だよ。

  しばらくして、幾分乾き始め
  生地に テリ が無くなった頃に
  良く絞った雑巾で 刷毛の染料を拭き取って
  もう一度 “空刷毛” をやってやるといいよ。

  返し刷毛 空刷毛 は
  上っ面をなめる様な感じで ふわっ と


  最後に、生地がある程度乾くまで
  片側に傾かないように気をつけて。
  染直後で 水分がイッパイある時は
  傾き始めると どんどん傾くからね。
  傾いたままにして置くと 生地の左右で
  色の 濃度 が違ってしまうよ。

  乾くまで気を抜いちゃダメだよ!

↑写真の様に、幾つかの生地を 同じ柱 で乾かしてる場合、乾き際に 生地が伸びて たるむので
生地同士の間隔は、充分取ってやってね。  (特に縮緬のような生地)

それと ↓ のように、刷毛の毛とかが抜け、乾く前の生地に乗ってたら注意!

紬とかの様に凹凸のある生地なら割と大丈夫だけど、塩瀬とかのように平モノは特に注意してやってね。
その部分の色が薄くなってしまうよ!  染料が落ち着いたら、ゴミは払ってやってね!



あと、化学染料だと関係ないんだけど 天然染料の場合

  染める前に 
  染料の 上澄み を漉してから
  使った方がいいよ。
  色味は薄くなってしまうけど
  後から 色落ちしたり スレが出たり といった
  デメリットが少なくなるからね。



媒染剤を 引き染 するのも 基本的には同じ。
ただ、鉄で媒染する時は どんどん反応していくので 注意して!


  ←こいつは生地の裏側なんだけど
  特に 鉄媒染の時は、表側は大丈夫でも
  裏側にこんな感じで 刷毛の跡が
  出る事があるんだ
  特に表側に出たら “きわづき” と言って
  もっと 濃い色 にしなければ ならないんだ。

  化学染料とかだったら 地入れ を重くしたり
  均染剤 といった薬品とか有るけどね。


まぁ、何事も 経験 が大事。

失敗しなきゃ 上手くなんねぇ!   ・・・ってか!           じゃ!



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2007年07月06日 Posted by 染師 麗 at 00:00地染