白蝋起こし 1

今回の  白蝋起こし  は、オレの師匠系列以外では あまりやってるのを見たことが無いんだ。

一応、染色の教本とかには載ってたりするんだけど あまり仕事としては見たことが無いナァ・・・

要は、白蝋の “染みる” という特性を生かして、蝋の濃淡でレリーフを作ってやって
染料が染みる部分 と 防染する部分 をなだらかに作って染めるんだ。

じゃ、いくよ!  先ずは、一番基本的なヤツから   (後は、これの応用だから)

  “白蝋” は 脆く ヒビが入り易いので
  小さい場面なら、友禅伸子に張ったままで
  仕事をしても いいんだけど 
  広い場面の場合は生地を友禅伸子から
  張り手 に移し変える時 ヒビが入ってしまったり
  その他 イロイロ “難” が出るので 
  大変だけど ←写真みたいに
  “張りっぱなし” でやった方がいいよ。

今回の仕事は  のイメージで。

  ←写真で “照り” のある部分が
  蝋の “厚み” のある部分で
  防染力 が 強い

  照りが無く、幾分グレーっぽく見える部分が
  蝋の 薄い 部分で 防染力が弱く
  染料が 染み込む 


作業の手順としては、外側から内側に向かって “押してくる” 感じ。

  
写真で観て、まだ 仕事されて無い部分に接してるところ が 蝋の薄い部分。
つまり、煙の アタマ (外側) が蝋の厚みがあって 内に向かって薄くなってくんだ。

蝋の厚い部分を作るのは それ程むづかしくは無いんだけど
薄い部分を作るのに チョット練習が要るな。
それと 蝋が冷えた部分に また蝋を持ってくと ガクッ と差がついてしまうので注意!
だから 仕事をしてる部分の 蝋の温度 には、気を配ってないとダメだよ。


  そして、全体の蝋が置き終わったら 引き染 に入るんだ。

  染料に ほんの少し 浸透剤 を入れてもいいかもしれないけど
  地色が みみ寄り (生地の端の染料が濃くなる) する危険があるので
  ←この状態の時,乾いた刷毛で 縦・横・斜め・円を描く様に軽く
  蝋の上を擦って、蝋の表面に ほんの少し傷?を入れてやると
  幾分 染料の乗りが良くなるよ。




↑染めた直後          ↑しばらく時間が経って    ↑ほとんど乾いて
染めた直後の蝋の上は 染料をかなりはじいているでしょ。
そのまま放って置くと 染料の粒 (ポチポチ) が、そのまま残ってしまうので
半乾きになるまで時々 “空刷毛” を入れてやって染料を蝋に馴染ませてやるんだ。
空刷毛を入れてやってると 乾くに連れて 蝋の上の染料粒が細かくなって 落ち着いてくるよ。
  
化学染料ならこれで終わりなんだけど、オレはこれから “鉄媒染” (濃チャコール地にする予定だったので)

  ←鉄媒染後の地色

  一度目に染めた時にシッカリ面倒見といてやれば、二度目の染の時は
  割と手間が掛からず 小さな染料粒になるよ。
  だけど、蝋はどんどん傷んできて (特に薄い部分) 
  染料の染み方の差が 厚い・薄い部分で大きくなってくるよ。
   (つまり 染みる・染みないの差がハッキリして来るんだ)


この後 アイロンで蝋取り。  
この時 化学染料の場合 蝋の上の染料を 生地に押し付けるように ジックリ 取ってやるんだ。  

作品解説???  もし良かったら こちらから

今日は、こんな感じ。  先ずは練習・練習!            じゃ!


・・・これ以降 “空へ” という 訪問着 の制作過程(白蝋起こし仕事)をアップしました。
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2007年09月01日 Posted by 染師 麗 at 01:06白蝋起こし

白蝋起こし 2

ほとんど前回の 応用? なんだけど・・・   (今回の柄は“起こす”というより“調子”なんだけど・・・)

白蝋だけで 柄を起こしながら 蝋ふせするのは,場面が小さかったり 簡単な柄ならいいんだけど
柄の形をキッチリさせたかったり、もっと細かい細工をしたい場合
先ずは 白付け をして柄の形を抜き、それから 堰出し して余裕を持ってやった方がいい時もあるんだ。

 → 
↑白付けをして 柄を抜いて 蝋取り後 堰出しをして 色刺し。
この時、刺しをする色を何色かで ぼかしてやっても面白い (深い) 効果が出るよ。
この 刺しをする時 白付けした時の 蝋分 が残っていて 染料をはじいて 刺しがしづらいと思うので
浸透剤を適宜入れてやってね。  (あまり入れすぎると色が柄の周りに寄っちゃうよ)

さて、ここまで準備が出来たら 白蝋仕事。

  ←白蝋をおいた後。

  照りのある部分が蝋の厚い所
  (染料をはじいて 地色が残る)

  照りの無い部分が蝋の薄い所
  (染料が染みる)


  浸透剤を入れるので 充分
  “掛け色”は染みるんだけど
  染料の乗りを もっと良くする為
  それと浸透剤の量を少なくする為
  乾いた 丸刷毛で軽く擦ってやって
  蝋の表面に満遍なく
  小さな傷 を入れてやるんだ。


  その後 浸透剤を入れた染料で刺し

  ←写真だと幾らか染料をはじいてるよね
  チョット浸透剤が、少ないかもしれない。

  そしたら、もう少し浸透剤を足してやるか
  面倒を見てやればOK


  浸透剤を入れると 染料の
  “表面張力”が無くなるので、傾いてると
  だんだん染料が下側に寄ってきて
  最後には 堰出し した蝋の外側に
  染料が走ってしまう (流れる) という
  思わぬトラブルが出たりするので
  刺した後の生地は 傾けないように注意!
  掛け色が乾いたら、この後 蝋取り

掛け色 が化学染料だった場合、特に 蝋取り は 蝋の上の染料がジックリ染みる様に。


・・・ 追記 ・・・
白蝋仕事の場合 (特に 調子を付けたり、起こしたり) 蝋の厚い部分を作るのはそれ程難しくは無いんだけど
蝋の薄い部分を作るのに チョットばかり練習が要る。   その練習方法?なんだけど・・・

こぼれた水滴を よく水分を拭い取った筆で “ヒョッ” と取る感じ。
  (水分は多い方から少ない方へ行こうとするから)
これを白蝋でやるには、一度 蝋の中に筆をどっぷり浸けてやって 暖かい蝋を筆に含ませて
その蝋をしごき取って 作業してる部分に持ってく感じ。
のんびりやってたら 作業してる部分の蝋が冷えてしまうので話にならないよ。 テキパキと!
     ・・・ホントは、やってるところを観れば 一目瞭然 なんだけどねぇ。

・・・でも、感じは そんな感じ。                じゃ!



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2007年09月01日 Posted by 染師 麗 at 01:06白蝋起こし