黒染め (三度黒)

染師 麗

2007年06月03日 00:00

今回は、天然染料による “黒染め” ですが・・・     難しいです!

化学染料の “黒” は、真っ黒ではなく 幾らかの “色味” を持っています。
(特に薄めて使用する時には それが顕著に出ます)
天然染料による “三度黒” は、巧く染まれば 色味の無い綺麗な “黒” になります。
ただ、染屋さん とは別に “黒染屋さん” が在るくらいで “本当の黒” は難しいです。


・・・前置きはこれ位にして、始めてみましょう。


先ず “三度黒” で使用する 染料その他は ヘマチン ・ 鉄 ・ 重クロム酸カリ の3種です。

“ヘマチン” は 染料屋さんに チップ や パウダーで販売されてます。
“鉄” は 三度黒の場合に使用するのは “ノアールナフトール” という加工?された鉄が販売されてます。
 (木酢酸鉄とか他の鉄でも出来ると思いますが・・・)
“重クロム酸カリ” は 劇薬なので 印鑑を持って薬屋さんに買いに行きます。


この3種が揃ったら 次に “濃度” を確認できる “ボーメー計” という器機が必要になります。

  ← これが ボーメー計

  染料屋さんで売ってます。



  ← それを 染料や媒染剤に入れて計ります。
  (比重なんでしょうかネェ・・・)

  温度は その時の常温で。




さて、その値ですが・・・

ヘマチン : 春 1.8~2.0  夏 1.0~1.5  冬 2.0~2.3  中間 1.5~1.8
ノアールナフトール : 春 1.6~1.8  夏 0.8~1.3  冬 1.8~2.0  中間 1.3~1.6
重クロム酸カリ : 通年 3.0~3.2

    (春 3・4・5月 : 夏 7・8・9月 : 冬 11・12・1・2月 : 中間 6・10月)

上記の値を目安にして下さい。


  ヘマチンは染料ですのであらかじめ煮出して
  染料を抽出しておきます。

  その主成分は 血液に含まれるヘモグロビンのようで
  ← しばらく経つとこの様に カビ が出ますが
  カビを除けて使えば問題無いです。
  (黒染屋さんでもそのように使用してるそうです)

  ← それを雑巾等で濾して使用します。

  あらかじめ 少し濃い目に染料を作っておくと
  水を加えて濃度の調整が出来るので便利です。

  ノアールナフトールは濃縮された原液で販売されてるので
  その都度 水で薄めて使います。

重クロム酸カリは通年 3.0~3.2 という値なので、その濃度の液を作っておくと便利です。



染め方は、特にこれといった注意はありませんので ムラ無く平らに 引き染 しましょう。

  ← ヘマチン を引いて

  黒染めの場合 全般 天日の下で乾かすのが
  良いそうですが、小品ならともかく 帯・着物では
  ムラが出てしますので、出来るだけ早く乾くよう
  いろいろな工夫をしましょう。


  ← ノアールナフトール を引いて
  (かなり黒っぽくなりますが、未だ濃紺)

  夏場は それ程関係ありませんが
  冬場は 乾燥に時間が掛かるので、オレはあらかじめ
  仕事場を暖め(暑い位に) それから引き染します。


  ← 重クロム酸カリ を引いて

  それと先に引いた染料を完全にを乾かしてから
  次の工程に入った方が良いようです。
  (他の引き染も同じですが特に)
  だからオレは “黒” に関しては 一日に一回だけで
  染てます。  (急いでる時には焦れますが我慢して)


三度黒 の場合 “蒸し” はしません。  (蒸しをすると生地が硬くなったり黒が赤くなったりしてしまいます)

黒に染めてから 蒸しをしなければならない様な場合は 重クロム酸カリの値を 2.0~2.5 位の
薄めにして 使用すると調子良いようです。

重クロム酸カリが乾いたら 蝋取り等をして 蒸しはせずに そのまま “水元” へ
良く染まっていると ほとんど色は出ません。  (若干カリの黄っぽい色が出るくらいです)



  その他では 重クロム酸カリを染めると
  ← 左の刷毛の様に 刷毛の毛が すごく痛みます。

  ・・・ので、オレは 重クロム酸カリ は古くなった刷毛を
  重クロム酸カリ専用にして使用しています。


なかなか難しいですが、“綺麗な黒” が染まった時は とっても し・れ・う~! ですので
挑戦してみる価値は充分にあると思います。               健闘を祈る!



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